どんな療育がいい?子どもに合った支援の見つけ方

この子には、
どんな療育が
合って
いるんだろう?

  • 子どもの発達が気になるけど、療育に通わせたほうがいいのか迷っている
  • 児童発達支援や療育をしている施設はどう選んだらいいかわからない
  • 子どもに合わない療育だったらどうしようと不安

大切なのは、プログラムの内容だけでなく、その子自身を見て、その子に合った支援を一緒に考えてくれるかどうか。

今回は、作業療法・療育を専門とする伊藤祐子先生に、療育で大切にしたい考え方や、子どもに合った療育を選ぶときのポイントについて伺いました。

伊藤祐子先生

伊藤祐子 先生

東京都立大学 健康福祉学部 作業療法学科
東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 作業療法科学域 教授

  「やってみたい」が、
子どもの成長を動かす

療育というと、「苦手なことを練習して、できることを増やす場所」と考えるかもしれません。

けれど、私たちが療育や作業療法で大切にしているのは、まず子ども自身が「やってみたい」と思えることです。子どもが興味を持っていること、好きなこと、楽しいと感じること。そこを入り口にすることで、子どもは自分から活動に関わり、さまざまな経験を重ねていきます。

「面白い」「楽しい」と感じることが、すべての出発点です。そこから「やってみたい」が生まれて、実際にやってみる。そして「やってよかった」と思えたら、それが次の経験や学びにもつながっていきます。

子どもが遊びに取り組む様子

療育施設は子どもを変えることから始まるのではなく、一人の人間として尊重され、「楽しい!」「もっとやりたい!」と思える「興味・関心の種」を見つけ、育んでいく場所です。

大切なのは、大人が「これをできるようになってほしい」と決めてしまうことではありません。「この子は何に興味があるんだろう」「何ならやってみたいと思えるんだろう」というところから、一緒に考えていくことです。

  療育を選ぶときに
大切にしたい3つのこと

療育を選ぶときに大切にしたい3つのこと(図解)

療育を選ぶときに大切なのは、その子自身を見て、その子に合った支援を考えてくれるかどうかということです。

具体的には、次の3つを大切にしているかを見てほしいと思います。

  • 1

    安心して関われる「信頼関係」を築いている

    どれだけ専門的な支援でも、その土台に信頼関係がなければ、子どもが安心して活動することはできません。

    療育の最初の段階では、何かを「教える」ことよりも、まず子どもとの関係をつくることが大切です。

    言葉でのやり取りが難しい子どもであっても、一緒に遊んだり、その子が興味を持っていることを共有したりしながら、少しずつ関係を築いていきます。一緒に遊ぶ中で、「この人と一緒なら大丈夫」「この人と何かをするのは安心できる」と感じてもらうことが、その先の活動につながるからです。

    子どもは遊びを通して支援者との信頼関係を築き、その中で自信をつけ、失敗してもまた挑戦できるようになっていきます。

  • 2

    子どもの「主体性」と「楽しさ」を優先する

    療育では、「頑張ればできる」と大人が一方的に課題を与えるのではなく、子ども自身の主体性を出発点にすることが大切です。

    もちろん、やってみたけれどうまくいかないこともあります。そんなときも、失敗を「できなかった」で終わらせるのではなく、「どうすればできそうかな?」と一緒に考え、方法を変えてもう一度試してみる。こうした経験も、子どもにとって大切な学びです。

    自分の身体をどこまで使えるのかを知り、「思ったより難しかった」と感じたら、自分で調整してみる。そうした経験を重ねることで、「またやってみよう」と思える力も育っていきます。

    何かを「できるようにする」ことだけでなく、子ども自身が選び、試し、工夫する経験を支えることも、療育の大切な役割です。

  • 3

    子どもだけでなく「環境」も一緒に考えている

    子どもの発達を考えるとき、つい「子ども自身を変える」ことに目が向きます。

    しかし、子どもが生活する環境を変えることで、困りごとが軽くなることもあります。

    作業療法の世界では、子どもを取り巻く状況を考えるときに「PEOモデル」という考え方があります。

    • P(Person):本人
    • E(Environment):環境
    • O(Occupation):作業・活動

    本人の特性だけを見るのではなく、環境や、実際に行っている活動との組み合わせから生活を捉える考え方です。

    例えば、着替えが苦手な子どもがいたとします。その場合、「一人で着替えられるように練習する」だけが方法ではありません。

    『服の素材を変えてみる』『着替える場所を変えてみる』『手順を変えてみる』など、本人だけではなく、活動や環境のほうを調整することで、その子が取り組みやすくなることもあります。

    また、環境には、家庭や園、学校だけでなく、保護者や療育者、先生など、子どもと関わる人も含まれます。療育者自身も子どもにとっては人的環境なので、「療育者がその子にとって良い環境であること」がすごく大事です。

    PEOモデルのイメージ写真

  どんな療育が
「正解」なのかは、
子どもによって違う

ここまで見てきたように、療育には一つの「正解」があるわけではありません。

大切なのは、子どもを一つの方法に当てはめるのではなく、その子の興味や気持ち、得意なこと、生活する環境まで見ながら、一緒に方法を考えてくれる場所かどうかということです。

療育を選ぶときは、支援の内容だけでなく、「ここなら子どもも家族も安心して相談できそう」と感じられるかという視点も大切にしてみてください。また、療育の成果を「○○ができるようになった」という結果だけで考える必要もありません。

  • 楽しかった。
  • やってみた。
  • 工夫してみた。
  • 失敗したけれど、もう一度挑戦した。

そうした一つひとつの経験も、子どもの中に積み重なっていきます。

「この子には、どんな経験が必要だろう?」
そんな視点で、専門職や療育者と一緒に考えてみることから始めてみてはいかがでしょうか。

  子どものために選んだ経験は、
決して無駄にならない。

誰でも「もっと早く相談していたら」「別の方法を選んでいたら」と、これまでの選択を振り返ってしまうことがあります。
でも、子どもの発達について悩み、療育や支援の選択に迷うことがあっても、その時に保護者の方が一生懸命考えて選んだことを後悔する必要はありません。

子どもはそれだけで成長していくわけではないですし、保護者の方が子どものために与えたいと思った機会は、必ずその子の経験として生きていきます。
その時その時に一生懸命向き合ってきたことは子どもにもちゃんと伝わります。

一人で抱え込まず、専門職や療育者など、子どものことを理解してくれる人に相談しながら、その時その精一杯子どもと向き合うことを大切にしてください。

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